大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(ネ)135号・昭33年(ネ)266号 判決

民法第七一五条による使用者責任を問うためには、被用者が使用者の事業の執行に付き第三者に損害を加えたことを要するものであることは同条の規定するところであつて、被用者の行為が「使用者の事業の執行について」なされたとするためには、それが被用者の職務に関する行為と認められるものでなければならない。本件でいえば被用者たる鈴木ふみ子が控訴会社の小切手、あるいは手形類を作成する仕事を平常担当していた関係にあることを要するのである。

しかしながら、本件においてはすでに認定したとおり、控訴会社東京事務所振出の小切手はすべて所長の多田穰の作成するところであつて、まれに同人が鈴木ふみ子に特定の小切手の作成を命じたことある程度で、同事務所と取引する第三者においても鈴木ふみ子が小切手作成、交付などの事務を担当しているものとは認めていなかつたことがあきらかである。

して見ると、鈴木ふみ子が本件小切手を作成して河野幹也に交付した行為を目して控訴会社の被用人が同会社の事業を執行するためになしたものとみなすことはできず、したがつて本件小切手振出につき民法第七一五条によつて控訴人の責任を問うことはできないものといわざるを得ない。

(牧野 谷口 秦)

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